2013年/監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ/ジャンル:サスペンス・ミステリー
作品概要
『プリズナーズ』は、幼い娘が失踪したことをきっかけに、一人の父親が「正義」と「狂気」の境界へと沈んでいくサスペンス大作である。 監督は『メッセージ』『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。 ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールという二大俳優がぶつかり合い、静かな住宅街の闇に潜む“人間の壊れていく音”を描く。 本作が胸を掴んで離さないのは、誘拐事件の背後に潜む真相ではなく、そこに直面した人々が「どう壊れ」「どう生き延びるか」という心の軌跡だ。
あらすじ
感謝祭の日、ケラー・ドーヴァーの娘が突如として姿を消す。唯一怪しいのは、知的障害を抱えた青年アレックス。 だが決定的な証拠が見つからず、刑事ロキは彼を解放する。 追い詰められたケラーは、「父としての正義」を信じ、自らの手でアレックスを監禁して真相を探ろうとする。 その一方で、事件は雪のように静かに、しかし確実に周囲の人間を蝕んでいく。 やがて浮かび上がるのは、善悪では説明できない“長い連鎖”だった。
作品の魅力
本作の魅力は、何よりも「正義を信じることの危うさ」を描いた脚本の強度だ。 ケラーが娘を救いたいという純粋すぎる思いで暴走していく姿は、観客に「自分ならどうするか」という痛烈な問いを突きつける。 犯罪捜査ものとしての緻密な構造も素晴らしい。ヴィルヌーヴ監督が得意とする“静寂の中の緊張感”は、街灯の下、雨の粒、呼吸の荒さといった微細な音までドラマに変えていく。 ロキ刑事を演じるジェイク・ギレンホールの細やかな表情表現も圧巻で、ただの捜査官ではなく、闇を凝視し続ける孤独な魂として厚みをもたらしている。
音楽について
ヨハン・ヨハンソンによるスコアは、心臓の鼓動のように低く響き、祈りにも似た旋律が冷たい空気を震わせる。 決して派手ではないが、登場人物の心理の沈み具合に合わせて音が“沈降”していくような構成で、物語の暗闇を何倍にも増幅させている。 特にクライマックス直前の音の使い方は、希望と絶望の境界を曖昧にし、鑑賞後も長く胸に残る。
こんな人におすすめ
- ただの誘拐事件ではない、心理の深層まで描いたミステリーが好きな人
- 静かな恐怖や緊張感を味わいたい人
- ヴィルヌーヴ監督作品の陰影ある世界観に惹かれる人
- 俳優の演技で作品の温度が変わる映画を好む人
まとめ
『プリズナーズ』は、事件そのものよりも「人が闇に触れたとき、どんな形に変わってしまうのか」を問う作品である。 ヒュー・ジャックマンの激情と、ジェイク・ギレンホールの静かな狂気。その対比が映画全体に深い陰影を落とし、観客を逃がさない。 鑑賞後、正義とは何か、信じるとは何か、家族を守るとは何か——その問いが心の奥で鈍く残り続ける。 最後の一滴まで緊張が溶けない、傑作サスペンスである。
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