公開年:2017年
監督:チャド・スタエルスキ
ジャンル:アクション/ノワール
作品概要
『ジョン・ウィック:チャプター2』は、前作で裏社会に戻らざるを得なかった伝説の殺し屋ジョン・ウィックが、さらに深い闇と暴力の連鎖へと足を踏み入れていく物語である。国際的な暗殺者ネットワーク“ハイテーブル”がより本格的に姿を現し、ジョンの戦いは個人的復讐の枠を超え、巨大なシステムとの衝突へと発展していく。前作から一段階スケールアップしながらも、シリーズ特有の静謐さと美学を損なうことなく、ひとつひとつのアクションがまるで儀式のように崇高な緊張感を放っている。
あらすじ
平穏を取り戻したかに見えたジョンの前に、血の盟約“マーカー”を持つサンティーノが現れる。彼はジョンに、実の姉でありハイテーブルの一員を暗殺するという任務を強要する。拒否すれば掟を破ることになり、受ければ裏社会全体を敵に回すことになる絶望的な選択。ジョンは渋々ローマへ向かい、華麗な暗殺劇を遂行するが、その瞬間から彼自身が世界中の殺し屋から命を狙われる立場へと転落していく。裏切り、報復、追撃。ジョンの唯一の救いである愛犬を連れ、彼は再び血の雨の中へと身を投じていく。
作品の魅力
本作最大の魅力は、アクションとしての爽快感ではなく、アクションが持つ“形式美”そのものにある。ジョン・ウィックは、ただ敵を倒すのではない。銃の交換、装填、動きの流れ、間合い、踏み込み――すべてがダンスの振り付けのように正確で美しい。「ガン・フー」と称される本シリーズ独自の戦闘スタイルは、本作でさらに洗練され、撃ち合いがまるで音楽のようにリズムを持ち始めている点に惚れ惚れする。
また、裏社会の掟や構造が深掘りされ、単なる“強い男の物語”ではない、“秩序と破壊の物語”へと変化しているのも面白い。ジョンは自由を求めても自由になれず、抜け出そうとするほどさらに強固な檻に閉じこめられていく。観客は、撃ち合いの爽快さを楽しみながらも、その裏にあるどうしようもない運命に胸を締め付けられる。
音楽について
サウンドトラックは、アクションシーンと完璧に同期し、音そのものがジョンの動きの一部となっている。電子音を軸にした重低音が響くとき、観客はまるでジョンと同じ呼吸をしているような錯覚に陥る。クラブのシーンでは音楽と銃声が同じビートを刻み、撃つたびにリズムが一段階上がっていくような快感がある。暴力の音と音楽が融合し、世界観そのものを“聴かせる”構造になっているのが実に見事だ。
こんな人におすすめ
- スタイリッシュで美しいアクションを求めている人
- 裏社会の掟や世界観の深掘りが好きな人
- 緊張感あるノワール作品に惹かれる人
- ジョンの孤独と覚悟を前作以上に感じたい人
まとめ
『チャプター2』は、ただ前作の成功を拡大した続編ではない。ジョン・ウィックというキャラクターを“伝説の存在”から“逃れられない人間”へと深く掘り下げ、彼の運命そのものに重力を与える作品だ。スタイリッシュ、クール、そして哀しい。アクション映画の快感とノワールの陰影を同時に味わえる、極めて完成度の高い一作である。
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