映画レビュー:アリスとテレスのまぼろし工場ー止まった世界で、まだ終わらない恋を抱いて

公開年:2023年 / 監督:岡田麿里 / ジャンル:ファンタジー・青春・ドラマ

作品概要

『アリスとテレスのまぼろし工場』は、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などで知られる岡田麿里が監督・脚本を務めたオリジナル長編アニメーション。人々が「時が止まった町」に閉じ込められるという幻想的な設定の中で、少年少女の心の衝動、愛、そして成長を描く。制作はMAPPA。現実と幻想の境界が曖昧に揺れる映像美と、岡田監督ならではの繊細な心情描写が融合した、強烈なエモーションの物語である。

あらすじ

突如、世界が「時間停止」という異常に包まれ、町から出られなくなった人々。中学生の正宗は、同じように閉じ込められた仲間たちと共に、終わらない日常を過ごしていた。ある日、廃工場の煙突から聞こえる不思議な音をきっかけに、正宗は謎めいた少女・五実と出会う。彼女の存在は、この町に隠された秘密と「時間停止」の理由に深く関わっていた。彼らは、世界を変える“選択”を迫られることになる──。

作品の魅力

最大の魅力は、岡田麿里が紡ぐ“閉ざされた世界での衝動の物語”だ。時間が止まったという設定は一見ファンタジーだが、その実、思春期の停滞と再生を象徴するメタファーとして機能している。MAPPAの卓越した映像技術によって描かれる夕暮れの光や風の描写は、静寂の中に生命感を宿すような詩的リアリズムを生む。また、登場人物それぞれが抱える葛藤──愛を選ぶか、現実を受け入れるか──が重層的に交差し、観る者に“生きるとは何か”を問いかける。岡田作品の集大成とも言える、情感の爆発がここにある。

音楽について

音楽を担当したのは横山克。彼の手による繊細かつ叙情的なスコアは、時間の止まった世界にかすかな鼓動を与える。ピアノや弦の旋律が物語の静寂と共鳴し、登場人物の心情をやさしく包み込む。主題歌の透明な歌声も、ラストシーンでの余韻を決定的なものにしており、映像と音楽の融合が見事だ。

こんな人におすすめ

  • 岡田麿里作品の感情表現に共鳴する人
  • 青春の痛みと再生を詩的に描いた物語が好きな人
  • 映像美と哲学的テーマを同時に味わいたい人
  • 「あの花」や「さよならの朝に約束の花をかざろう」が刺さった人

まとめ

『アリスとテレスのまぼろし工場』は、止まった世界で“心だけが進み続ける”少年少女たちの物語だ。岡田麿里が描く「喪失」と「希望」のバランスは見事であり、閉ざされた町の中で見つける一瞬の感情が、永遠のように輝く。思春期の不安や恋心、そして大人になる痛みを、ファンタジーという器に閉じ込めた極めて個人的な作品である。観終えた後、あなたの中の「止まっていた時間」も静かに動き出すだろう。

残念ながら現在Amazon prime videoやU-NEXTで視聴することはできません。

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