映画レビュー:ドライブ・マイ・カー

公開年:2021年

監督:濱口竜介

ジャンル:ヒューマンドラマ/心理

作品概要

『ドライブ・マイ・カー』は、村上春樹の短編小説を原作とした日本映画で、濱口竜介監督による心理描写と人間関係の繊細な表現が光る作品です。 カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ました。 物語は演劇を舞台に展開し、主人公・家福悠介の失った妻への思いや、人生の喪失と再生を静かに描きます。

あらすじ

舞台俳優で演出家の家福悠介は、妻・音の突然の死を経験し深い悲しみに暮れていました。 心の空白を抱えつつも、彼は北海道での演劇公演のため、若い女性運転手・みさきと共に車で移動することになります。

道中の会話や共同作業を通じて、家福は自身の心の奥に閉じ込めていた感情や記憶と向き合うことになります。 同時に、俳優仲間たちの言葉や演技の中で、失われた愛や人間関係の複雑さ、そして癒しの可能性が少しずつ浮かび上がってきます。 家福は妻との思い出や自分自身の弱さを受け入れつつ、再び人と向き合う勇気を取り戻していきます。

作品の魅力

本作の魅力は、言葉少なに人の心理や感情の機微を描く点にあります。無言の時間や、車内での静かな会話が、主人公の内面の変化を丁寧に浮かび上がらせます。 特に、喪失感や孤独を抱える人々の心情が、細やかな表情や動作、周囲との微妙な距離感で描かれており、観客は自然と物語に引き込まれます。

また、演劇という舞台芸術を通して、登場人物たちの内面世界と外部世界の交錯が巧みに表現されています。 言葉の裏に隠された感情や、演技の中に滲み出る人間の葛藤が、観る者に深い共感と考察を促します。

主人公の家福を演じる西島秀俊の穏やかでありながらも内面の葛藤を抱えた演技は圧巻です。 運転手みさき役の三浦透子との静かな掛け合いも自然で、観客は彼らの関係性の微細な変化に心を動かされます。

音楽について

音楽は控えめに用いられており、物語の静謐さや心理描写を際立たせています。 劇中のピアノや弦楽器の旋律は、家福の心の揺れや、登場人物同士の微妙な距離感を優しく支え、余韻を残す役割を果たしています。 過度に感情を煽ることなく、静かに物語に寄り添う音楽の使い方は、本作の持つ独特の世界観に深みを与えています。

こんな人におすすめ

  • 静かで深い心理描写を楽しみたい人
  • 人間関係や喪失、再生をテーマにした映画に興味がある人
  • 演劇や舞台芸術を背景にした映画の雰囲気が好きな人
  • 言葉では表せない感情の機微を味わいたい人

まとめ

『ドライブ・マイ・カー』は、言葉と沈黙、日常と非日常が交錯する静かな傑作です。 人生の喪失や孤独に向き合う主人公の姿を通じて、観客は愛や再生の可能性について深く考えさせられます。 静かで丁寧な描写と、抑制の効いた音楽、繊細な演技が融合した本作は、感情の余韻を長く心に残す映画です。

観終わった後、静かな感動とともに、自分自身の人生や大切な人との時間を見つめ直すきっかけを与えてくれるでしょう。 心に残る余韻とともに、多くの人におすすめしたいヒューマンドラマです。

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