映画レビュー:パスト・ライブス/再会 ― もしも、あの時違う選択をしていたなら

公開年:2023年 監督:セリーヌ・ソン ジャンル:ドラマ/ロマンス

作品概要

A24が贈る静謐な恋愛ドラマ『パスト・ライブス/再会』は、韓国系カナダ人監督セリーヌ・ソンが自身の体験をもとに描いた半自伝的作品。ニューヨークとソウル、そして時を越えて交差するふたりの人生を通して、「運命」と「選択」の意味を静かに問いかける。主演は『ミナリ』のユ・テオと『ウォーク・イン・ザ・ショーケーズ』のグレタ・リー。初監督作ながら、第96回アカデミー賞で作品賞・脚本賞・監督賞の3部門にノミネートされ、高い評価を得た。

あらすじ

12歳の少女ノラ(グレタ・リー)は、ソウルで親友のヘソン(ユ・テオ)と過ごしていた。しかし家族の移住でカナダへ引っ越すことになり、ふたりは離れ離れになる。12年後、SNSで偶然再会したふたりはオンライン通話で日々を語り合い、消えかけていた絆を取り戻していく。だが、ノラにはすでに恋人がいた。彼女は自分の人生の選択を確かめるように、かつての故郷とヘソンへの思いに揺れながらも、再び距離を置く。さらに12年後、ヘソンがニューヨークを訪れる。20年以上の時を越えて再会したふたりの視線の先にあるのは、愛なのか、それとも“もうひとつの人生”への郷愁なのか。

作品の魅力

『パスト・ライブス/再会』の最大の魅力は、感情を誇張せず、沈黙の中に人生の余白を描く繊細な演出にある。セリーヌ・ソン監督は台詞よりも“間”で語り、ノラとヘソンが交わすわずかな視線や呼吸のズレに、観る者は自分自身の過去の選択を重ねてしまう。ニューヨークの街の喧騒と静かな夜の光が交錯する映像は、ふたりの距離を象徴するように美しく、まるで時の流れそのものがスクリーンに宿ったかのよう。過去と現在が交錯する構成の中で、観客は“もしも”という想いの痛みと優しさを同時に味わうことになる。

音楽について

ダニエル・ロッセンとクリストファー・ベア(Grizzly Bear)が手掛けた音楽は、作品全体に流れる静かな詩情を引き立てている。ピアノと弦が織りなす穏やかな旋律は、言葉にならない感情の波を包み込み、ノラとヘソンの沈黙に寄り添う。特に終盤、2人が別れを告げる夜に流れる曲は、まるで観客の胸に刻まれた“過去の愛”をそっと呼び起こすようだ。音楽が物語を押しつぶすことなく、あくまで心の呼吸として存在している点も本作の美学である。

こんな人におすすめ

  • かつての恋を今でもふと想い出す人
  • 「運命」や「選択」という言葉に弱い人
  • 静かで深い余韻を残す人間ドラマを求めている人
  • A24作品が好きで、感情の“間”を感じ取りたい人

まとめ

『パスト・ライブス/再会』は、派手な演出も劇的な展開もない。それでも、心の奥底に長く残る“余白の映画”だ。人生にはいくつもの「もしも」があり、私たちはそのたびに選択を重ねて生きていく。ノラとヘソンの物語は、その選択が間違いではなかったことを静かに教えてくれる。過去を悔やむことなく、ただ「今ここにいる」自分を受け入れるための映画。観終えたあと、静かに息を吸い込むような時間が訪れるはずだ。

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