映画レビュー：アンダーカレント ― 見えざる水面下に潜む人間模様

2025年／監督：山崎貴／ジャンル：サスペンス・ドラマ

作品概要

『アンダーカレント』は、現代社会における人間関係の微妙なバランスと、表面では見えない陰影を描いたサスペンス・ドラマである。山崎貴監督はこれまでの特撮・アドベンチャー作品で知られるが、本作ではリアルな心理描写と緊張感を重視した演出に挑戦。家族、友人、仕事関係など、さまざまな人間関係の“水面下”に潜む感情や秘密が交錯し、観客に常に次の展開を想像させる構造が魅力だ。

あらすじ

主人公・斎藤涼介（松坂桃李）は、東京のある出版社で働く青年。日常生活は平穏に見えるが、職場の人間関係や家族との微妙な距離感に悩みを抱えている。ある日、同僚の異変に気づいたことから、涼介は会社の中に潜む不正や隠された過去の秘密に巻き込まれていく。誰もが表面上は平静を装いながら、内面ではさまざまな思惑を抱えていることが徐々に明らかになる。涼介は自らの信念と、周囲との信頼関係の間で葛藤しながら、真実を見極めようと奮闘する。

作品の魅力

本作の魅力は、人間関係の機微や心理描写を丁寧に描き出すことにある。人々の言動や表情、会話の裏に隠された感情が絶妙に描写され、観客は一瞬たりとも目が離せない。涼介の視点を通して描かれる複雑な人間模様は、現実社会の人間関係の縮図のようでもあり、共感と緊張感が同居する。特に職場での権力構造や、家族間の微妙な力関係をリアルに描くことで、単なるサスペンスにとどまらず、心理ドラマとしての深みもある。

音楽について

音楽は久石譲が担当。繊細で緊張感のあるメロディが、物語の緊迫感を増幅させる。特にクライマックスに向かうシーンでは、静かな弦楽器の旋律と電子音が交錯し、観客に深い没入感を与える。音楽のテンポや強弱の変化が登場人物の心理状態とリンクしており、視覚と聴覚の両面からサスペンスを体感できる演出になっている。

こんな人におすすめ

心理描写や人間関係のサスペンスに興味がある人
リアルな社会ドラマとサスペンスを同時に楽しみたい人
登場人物の心理や言動に注目する観察型の映画が好きな人
緊張感のある映像表現と音楽による演出に魅力を感じる人

まとめ

『アンダーカレント』は、日常の裏側に潜む人間模様を巧みに描いた心理サスペンスである。表面上は平穏に見える世界でも、個々の思惑や感情は複雑に絡み合っていることを示しており、観客は物語の進行とともに次第に人間関係の深みを理解していく。涼介が直面する葛藤や選択は、現代社会で誰もが感じうる普遍的なテーマであり、観る者に強い共感と余韻を残す。日常の中に潜む微細な心理的変化や秘密に興味がある人には、ぜひおすすめしたい一作である。

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